前に明希ちゃんが座ると、ふわっといい匂いがした。


…見ると、ほんとに男には見えないんだけど。


「…ねえ、明希ちゃん。ちょっと聞いてもいい?」


そう言うと、明希ちゃんは嬉しそうに振り返った。


「あらっ。アタシ、自己紹介してないわよね?」

「竜也くんから聞いたの」


私の隣に座った竜也くんをちらっと見ると、明希ちゃんはにこっと笑った。


「そうなの! アタシは江藤 明希。よろしくね、なっちゃん。それで、聞きたいことって?」

「あ、うん。あのね…、竜也くんから明希ちゃんは男だって聞いたんだけど…、本当?」


少しだけ緊張した。

触れちゃいけないことだったらどうしよう、って。

そしたら竜也くんのせいにしよう!!


…でも、明希ちゃんはけろっとした顔で、


「あ、そうよ。アタシは男よ?」

と、あっさり肯定した。

…拍子抜けした。


「じ、じゃあ、なんでそんな格好を?」

「自分が一番素敵に見えるからよ! アタシ、男らしい格好よりもこっちの方が似合うと思わない?」

「うん、かなり美人!」

「ふふ、ありがと。そういうことよ。それにアタシ好きだからね、可愛いものが。ここなら無理して嫌な格好しなくて済むから、アタシはこの学校が好き。なっちゃんも、きっと好きになるわ」


明希ちゃんの優しい笑顔に、私も笑って頷いた。