恵理子がいなくなった図書室で、私はぼんやりと外を眺めた。今年も雪によって交通網に影響が出ていて、かつ事故も多く聞く。
暗いニュースばかりで参ってしまう。
―――――斉藤先輩の卒業式も、確か季節外れの大雪の影響が出ていた。
雪がある卒業式というのは珍しくなかったが、それでも雪は多く、春なんて来ないんではないかと思うくらいだった。
最後まで言わなかったが、私は先輩が好きだった。
それが恋だと気づいてしまったら何かが壊れてしまいそうで、溢れてしまいそうで、私はそれに蓋をした。出てこないようにきつくきつく、紐も縛って。
気がつかないふりをした。
先輩はどうだったのだろう。
私はもうすぐ、社会に出る。
いろんな人に出会うだろうけど、それよりも叫びたくなるような出来事に突っ伏したくなることのほうが多いはずだ。
世の中は冷たい。
だが、それだけが世の中ではない。
辛いことを、苦しいことを知っているから、誰かにそれを味わって欲しくないと思う。自分は優しくなりたいと願う。
隣人すら敵に見えるような世の中だが、まださよならするわけなはいかないのだと奮い立たせて、私は泣きながら、鼻水をたらして不細工な顔をしながら、立ち上がりたい。
外は吹雪になっていた。
帰るのに苦労しそうだな、と思う。
大学を卒業した先輩が、それからどうなったか私は知らない。卒業する前までは頻繁ではなかったがやりとりをしていたが、自然となくなった。私には連絡する勇気がなかった。
あの時の私との会話を思い出してくれていたなら、と私は少しだけ期待しながら、そして言葉をくれた先輩に感謝するのだ。
あの時の、あなたに。
了


