「それって、俺が、俺の意思で選んだり頑張った結果じゃない。こうすればこうなるっていう結果の固まりだ」
「そういうものじゃないですか?」
変な人。
それなりに見た目がいいから、密かに彼に思いを寄せている人がいるのを知っている。
黙っていればいいのに。
そう思いながら、私はそんな先輩が好ましかった。
お前なあ、とあきれたような声。「悟りすぎ」といわれ、そうだろうかと首を傾げる。
「模範を求められるんですよ。クソも役に立たないものばっかり教えられて」
「確かになあ……ってお前、口悪いな」
「腹黒なんですよ、私」
「腹黒か」
この心地よさをなんと言えばいいのか。
先輩と話しているときだけが、世界だった。
勉強を頑張っても、ただ成績に出るだけ。つれるのは先生と、下心のある同級生だけ。都合いいような位置づけの、友人というくくりに"入っているだけ"状態。それは私を見ているのじゃない。私から生まれる数字や、課題の答えだけを見ているのだ。
気持ち悪かった。
へらへらと平然とセックスの話をして、酒の話をする彼女、彼らが。
そして居場所に悩み、彼女らに振り回されるような自分が。
先輩だけは、わかってくれていた。
この、息苦しさを。
ここにはあるように見えて、最初から居場所なんていうものはなかった。だからもがいて、もがいて、どうせなら同級生なんかより進学する先での未来を選んだ。卒業すればどうせ彼女らには会わなくなる。いいことばかりいうその唇は平然と嘘をつくことを私は知っていた。


