「先輩、頭いいから言われるんですよ」
「こんな田舎で学年一位取っても嬉しくないね」
「贅沢だ」
「お前だって毎回三位以内には入ってるから、あいつに声かけられてるんだろうが」
誰から聞いた、と問い詰めれば先生の名前があがった。進路指導の先生の名前で、私の学年の担当でもあるから、知っていてもおかしくはない。
プライバシーの侵害だ、と洩らした私に、斉藤先輩が苦笑いを浮かべる。
はっきりいうとあれだが……ここの生徒は勉強しないのだ。ノー勉強でテストを受ける者もいる。
そんななかで三位以内に入っても素直に喜べないのは事実だ。
それに、こんな学校からあの先生がごり押しする大学へ、あるいは専門学校へ行けば苦労するのは目に見えている。実際、進学したのはいいが退学したという話をよく聞いていた。
「いい成績を取れば褒められる。褒められたいから頑張るけど、あれ、って気づく」
先輩は、地元の人ではなかった。
隣町からこの高校に通っていた。かといって隣町で生まれ育ったという訳じゃないらしい。
小学校の高学年からだとか、聞いたことがあった。
先輩は頭が良くて、こんな馬鹿ばかりの高校に来たのか。前に聞いたら「気楽かなと思って」とよくわからない返事が返された。
ひょんなことから仲良くなった、いや、話すようになった先輩が――――この高校にいる学生の誰よりも都会的な雰囲気を持っていて、それなのに田舎を好んでいた。ここでいう変わり者というのは、流行を追いかけ遊ぶような連中を指すものではない。私や、先輩のような置いていかれたような、それでいて何かを抱いているものばかり。
先輩は階段に腰を下ろしたまま続ける。


