「仕事中悪かったな…もう行くよ」

「社長、何か用があって来たんじゃ?」

美緒の言葉にデスクの上を指差す。


「今度新たに参入する大型ショッピングモールの視察の件の書類だ。

一緒に行ってもらうつもりだから、しっかり目を通しておいてくれ」


「・・・はい」

2人の会話は終わり、僕の前に来た社長。

…僕の肩にポンと手を置き、ボソッと呟いた。



「…美緒は、絶対に渡さないから」

「・・・?!」

その言葉を吐き、社長は部屋を出ていった。


…専務室には、重苦しい空気が流れる。


「…須藤」

「・・・はい」


「なぜ彼を殴ったの?」

「・・・・」

言えるわけがなかった。

…社長が美緒にキスした事。

…それにすごく腹が立ったこと。

・・・その腹立たしさは、美緒を愛してるが故だと言う事。

そのすべてがバレテしまえば、今の契約は成り立たなくなる。

僕が美緒の傍にいられなくなる。