彼氏契約書

「失礼します」

「おう、やっと来たか、専務」


「すみません、朝礼が少し長引きまして」

「それなら仕方がない、・・・まぁ、そこに座って」


「失礼します」

私は社長の指示通り、ソファーに腰かけた。

社長は私の横に座り、私のデザインをマジマジと見つめている。


「あの、社長」

「なんだ？」


「ちょっと近すぎはしませんか？反対側のソファーが空いてますが」

「・・・気にするな」

…気にします。

とにかく近すぎるんです、落ち着きません、今は仕事中です。


「このデザイン、凄くイイんだ」

「…ありがとうございます」


「今までと全然違ったデザインだな、…何か心境の変化でも？」

「…とくには」

…なくはない。…仮にも、…契約でも、『彼氏』と言う名の

男が出来た。


「オレと美緒がであった時みたいに、キラキラしてていい」

「・・・」

社長の言葉に、ピクッと反応してしまう。

…気にするな。自分に言い聞かせる。