「迷惑かけてゴメンね?看病、ありがとう、助かったよ。

薫子さんの家に長居は出来ないから、帰るよ」

一言礼を言い、僕はベッドから立ち上がる…が。

やはりまだ、足元がふらつく。


「無理しないでください…送りますから。

今日の仕事は休んでください。今日は大したアポもないですし、

雑用なら私一人でも大丈夫ですから」

・・・ここは大人しく薫子の言う事を聞くべきだと思った。

無理をすれば、帰ってまた迷惑をかけかねないと思ったから。


…それからタクシーでマンションに戻った僕は、部屋まで薫子に送ってもらう。


「…須藤」

「…美緒さん」


僕のマンションのドアの前、美緒さんがしゃがみ込んでいた。

・・・こんな早朝に、なぜ美緒さんがここにいるのか?

…いつからそこにいたのか。


「…ゴメン、なんか、昨日の須藤の具合が気になっただけだから」

そう言って苦笑いした美緒さんは僕たちの横を通り過ぎる。


「美緒さん」

…美緒さん、貴女は一体いつからここにいたんだ?

冷たくなった氷のような手。