「…ありがとう」

そう言って微笑めば、蒼空もニコッと笑みを浮かべた。


身支度を済ませ、専務室を出た私たちは、

ロビーへと降りた。

…私は思わず足を止めた。


「どうかしましたか、美緒さん?」

突然私が止まったので、蒼空も止まり振り返る。


「…須藤、アンタって、そんなにモテたっけ?」

「・・・は?」

私の言葉に、全く理解不能と言った顔の蒼空。

…どうやら本人は、全く無自覚のようだ。


周りからの熱い視線に。

周りの黄色い声に。

私がいない1年の間に、、蒼空はカッコよさに磨きがかかったのは、

フランスに来た時にわかってはいた。

でもだからって、こんなにも、モテていたなんて・・・


こんな三十路を迎えたおばさんじゃ、

やあっぱり、蒼空には似合わないんじゃないかって、思わずにいられなかった。


「美緒さん、よくわかりませんが…

アポを取ってる時間が迫ってますので、急ぎますよ」

「え、あ・・・うん」