この愛に抱かれて

東京

作本家


明美たちの住まいは都心にあった。


都内でも指折りの高級住宅街として知られ、財界や芸能界などの著名人も多く暮らしているところだった。



8階建ての高級マンション



その最上階の部屋だ。



明美は小さな出版会社で編集の仕事をしていた。


夫の作本健一はコンピューターのエンジニアをしていた。


どこにでもいるような、ごく平凡な夫婦だった。



「ささ、上がってちょうだい」


玄関の扉を開けた明美が、甘ったるい声で響子に言った。


東京駅からタクシーで移動している間中、響子は明美の香水の匂いに参っていた。