この愛に抱かれて

冷たい風が頬を刺した。


門を出たところで振り返って家を見た。


みんなの顔を思い出していた。


みんなの優しさを思い出していた。



とめどなく涙が溢れた。



でも、自分はここにいてはいけないのだ。


響子は何度も自分に言い聞かせた。



振り切るように、暗い夜道に飛び込んだ。