響子がジュースを飲んでいると、怜が目を擦りながら居間にやってきた。


隣の部屋で昼寝をしていたのだ。


響子のことを不思議そうに見ながら、座っていた利恵の懐に抱きついた。


「怜、響子ちゃんにご挨拶は?」


利恵の言葉に、怜は照れくさがって身体を仰け反らせた。


チラチラと響子のことを見ては利恵の胸に顔を埋めて甘える仕草を見せた。


響子はその様子をじっと見つめていた。


母親に甘えている怜の姿が羨ましかった。


自分にはもう、甘えられる母は居ないのだ。


やりきれない寂しさが幼い響子の胸を締め付けていた。