この愛に抱かれて

「事故のこと、思い出したのかしら?」


「そういえば、事故のときも家族3人だったんだよな」


利恵は響子の前にしゃがみこむと、目線を同じ高さに合わせた。


「響子ちゃん。怖がらなくても大丈夫だからね」


利恵の目をじっと見つめると、響子は彼女の懐に飛び込んだ。


響子は利恵に恵美子の面影を重ねていた。


ひとつ違いの利恵は恵美子とよく似ていた。


背格好から声までそっくりだった。


だからこそ、響子は春川家を選んだのだ。


利恵の傍にいると、まるで母親と一緒にいるように思えていた。