この愛に抱かれて

うす雲で覆われた空の下、響子は利恵と手を繋ぎながらプラットホームに降り立った。


太陽の光が乱反射していたせいで、雲全体が眩しかった。



響子は目を細めながら、遠くに連なる南アルプスの山々を睨みつけるように見つめた。




駅には利恵の夫、春川竜彦が車で迎えに来ていた。


「こんにちは」


竜彦は響子の頭を撫でながら話しかけた。



響子は兎のぬいぐるみを両手で抱きしめたまま、伏し目がちに小さく頷いた。



3人で線路沿いにある駐車場まで歩いていくと、響子が車の前で立ち止まった。


「ん?」


竜彦が利恵の顔を見た。