この愛に抱かれて

病室では加藤家の家政婦が直樹の衣類などを整理し、手際よく退院の準備をていた。


「直樹さん。貴方はこれからお父様のところへ行ってくださいね」


「ふたりは?」


「私たちは、博史さんのお母様のところへお見舞いに参ります」


「俺も一緒に行きたいな」


「今日は、お父様のところへ」


「ふむ」


直樹は源太郎に会うことを少しばかり躊躇っていた。


車を廃車にしたことや皆に迷惑をかけたことで、相当叱られるにちがいないと思っていたからだ。


ナースステーションの職員たちに挨拶をしたあと、直樹は迎えの車で源太郎が待つ会社へと向かった。