涙はすでに枯れ果てていた。


自分ではどうにもならない運命という名の濁流に、響子はこの15年間翻弄され続けた。


もう誰を恨んでも仕方が無い。


諦めの思いだけが頭の中にあった。



不意な突風にあおられて響子は前のめりに倒れた。

地面に両手をついた拍子に、首にかけていた細い銀色のネックレスがスルスルと垂れ下がる。

ネックレスにはシンプルな形のマリッジリングが二つ通してあった。


ゆらゆらと揺れる指輪をじっと見つめながら、響子はそのまま草むらの上にしゃがみこんだ。


そして右手で強く指輪を握り締めると静かに目を閉じた。


耳元を吹き抜ける風の音だけが絶え間なく鳴り響いていた。