「栞……栞……」

柔らかいハスキーボイスでまどろみから醒める。
うっすら目を開けると、そこには「彼」がいた。

茶色がかった瞳。柔らかな髪。
整った顔立ち。
形のいい唇が微笑みをたたえている。

「ううン……叔父さん……?」

その人は、エプロンをスルリと外すと告げた。

「いつまで寝てんだ。早く起きないと味噌汁、冷めちゃうぞ」

「えっ…? あっ、ヤバっ……こんな時間」

私がガバッと身を起こすと、叔父さんはクスッと笑って

「早く着替えて。
朝ごはんは食べていきなさい」

と言いおいて部屋を出ていった。