愛裕が病室から出ていった
後のことだった。

「気に入らねぇ……」

愛裕の兄…空海はそう呟いた。
それはそれは、とても不機嫌そうな顔をしながら…

「まああ、空海」

それをなだめる空海の親友の息吹。
空海の不機嫌が少し和らいだところでそっと覗きこむ。

「調子はどうなの、空海」

「あぁ、息吹。
大丈夫だ。
かなりいい感じだぜ」


「ふ~ん、ならいいんだけど……
…………また不機嫌そうな顔してるよ。」

何かをまた思いだしたのか不機嫌になった空海に息吹は呆れながら言う。

「だって、あいつ……
琥珀様、琥珀様って…………!」

「うん。愛裕ちゃん可愛かったよね~」

イライラしながら言う空海に
さらに追い討ちをかける息吹。
これを天然でやっているのがまた怖い。

「…くそぉ」

「……でもよかった。愛裕ちゃんに本当の一番ができて……」

息吹は嬉しそうに言う。
どこか哀しさを含ませながら……

「でも、いいのか?
お前……愛裕のこと……」

「愛裕ちゃんの俺に対する好きは家族としてだからね。それにさ、大好きな人が幸せでいてくれることが、一番の幸せだから………あ、空海もだからね?」

しばらく黙った空海。

「……だが…やっぱり、あの琥珀様ってヤツ……むかつく……
愛裕が……初めてあんな笑顔をっ……」

やっぱり知らんが無性に腹が立つ。
息吹に言うとまた「シスコン」とか言わ れるから黙っとくけどな。
琥珀か。
どんなヤツか知らねえがさくらを泣かせ たら承知しねぇ……

―――そう。琥珀の見たあの笑顔は
琥珀自身にむけられた笑顔だったのだ。



その頃、琥珀と愛裕はというと
琥珀は部屋の中で、愛裕は部屋の前で
それぞれ顔を赤く染めていたのでした。