「昨日からずっといてくれたの?」







「あぁ・・・、まさかこんなにひどい状態だって知らなくってさ・・・」








点滴姿のレイを見てリョウが辛そうにそう言う。









「レイね、私を助けてくれたの・・・レイがいなかったら、私、殺されてたの。私は無傷でレイが刺されたの・・・」









どうしてもリョウに聞いて欲しかった。






「・・・もういいよ。もう知ってるから・・・」








リョウはくぐもった声でうつむく。





   泣いてる・・・






   リョウが泣いてる・・・








「レイは昔から生意気ですぐに俺の物を欲しがる。うっとおしいって思った頃もあったし、ムカついたことは数え切れない。でも・・・こんな姿のレイを見るのは1番嫌だ。大事な弟なんだ。」







「・・・リョウ」







兄弟仲が悪いと勝手に、思い込んでいた。








でも、本当はレイの事大事に思っている。









こんな姿のレイを見てリョウが1番ショックを受けているのかもしれない。








「昨日、この病室に入って・・・レイと真由を見て・・・何でカナダに行ったんだろうって、後悔した。大事な人がいるのに、俺は・・・バカだ」









「バカじゃないよ・・・こんな事って誰も想像できない事だから。ただ・・・私はレイに傷を残してしまったのよ。レイがちゃんと治るまで、私は傍にいなくちゃいけないの」







   今の私が出来る、せめてものレイへの恩返し。








「真由・・・俺は・・・」







リョウは、涙がこみ上げて言葉に詰まっている。








溢れ出た涙が、リョウの頬を流れ落ちる。








こんなに弱りきったリョウを見ていられなかった。









真由は、ベッドを降りリョウの傍に行き、がっくり落としている背中に後ろから優しく抱きついた。









「レイも私も、ちゃんと生きている。だから泣かないで。」








私がレイに抱きしめてもらって安心したように、リョウにも大丈夫だからと安心してもらいたかった。










「真由・・・俺は、真由が好きなんだ。それなのに・・・俺は、嫉妬している自分が許せなくって、冷たくして・・・カナダだって・・・恵里香にだって・・・もう、とっくに終わっていたのに・・・会って確かめたくて・・・」









「・・・・リョウ・・・もういいよ」








「・・・俺は、大事なものを・・・残して・・・バカだ。」









リョウの背中は、ずっと震えている。








自然と抱きしめている腕にギュッと力が入った。







「私も、リョウが好きだよ。リョウに他に好きな人がいても、それでもいいって思ってた。」






「・・真由?」







リョウは嬉しそうな声を出して、振り向き真由を正面から抱きしめる。





   

抱きしめられた体は、自分の意識とは関係なく硬直する。







   嬉しいのに・・・なぜ・・?





   体は、こわばったまま固まり続ける。

   




「ゴメン真由。・・・あんな事があったのに抱きついたりして」






真由の反応に、リョウは慌てて体を引いた。