「それで、東山君は何て?」







時折、大声で動きの悪い部員に喝を入れながら千波は、呆れたようにそう聞き返す。








新人戦も近いこの時期に、恋愛相談しに来る私も、どうかと思うけど、それでも誰かに聞いてもらわないと、自分では上手く処理できない。










「私の事、好きだって。でも付き合って欲しいとかそんなんじゃなくって、何て言うか、同情?みたいな感じで」










「同情?そんな訳ないでしょ。はぁ~。なにやってんの?リョウの事好きなんでしょ?だったら、もっと本気でリョウに行かないと、横から連れ去られるよ、マジで!」








東山君からの思いがけない告白で会話が終わり、どうしていいか分からず、気がついたらバスケ部の千波に全部を話していた。









千波は、キツい性格だと誤解されやすいがはっきり物事を、冷静に言ってくれる唯一の友達。










真由は、そんな千波が好きだしカッコイイといつも思っている。









「・・・でも関屋さんは本命で、私は2番手の補欠的な存在だと思うのに、私だけ見てとか、カナダに行かないでって言えないよ・・・」







   正直な気持ちで、臆病な自分。








「もう~じれったいな!当たって砕け散ってくればいいじゃない?夏休みはすっきりした気持ちでスタートするべきだって!」







当たって砕け散るかぁ・・・・そんな勇気出てこないよ・・・









考えて込んでしまう真由の、憂鬱そうな姿を千波は『はぁ~』とため息混じりで見た。









「お前ら~、新人戦優勝したら、真由と海だ!」








千波の発した大きな声に、体育館は地鳴りのような『おぉぉぉ~』が響いた。









バスケ部の部員に一気にやる気がみなぎっている。






「ちょっと、千波、本気?」








「本気!景品が良いと奴らはよく動くからね?それに、気晴らしになるでしょ?夏休みはくさってないでハジけないとね?」










いたずらっ子のように笑う千波に、やられたって感じで気持ちが少し楽になった。






   夏休みか~。




   やっぱりリョウには、何も聞けないし言えないな・・・・





   2番手でも・・・・それでも好きだから・・・





 
   バカみたいだね・・・