「お前って、すっげーイラつく。」






喧嘩ではないけど、他の人に会話を聞かれたくなく、真由は鍵を掛けた。








「じゃ~何で、私と付き合ってるの?」







前々からの疑問を、思い切ってぶつけてみた。



   
   


   不機嫌になってばかりなら、いっその事別れればいいのよ。



   


   どーせ、気まぐれで付き合ってるんだし・・・




   


   別れるのなんて簡単じゃない?







「俺のモノだからに決まってるだろう?それに別れる気はねーよ。」




   この人って・・・やっぱり分からない・・・




   俺のモノって・・・何?





   ただの気に入ったおもちゃ感覚?









「お前は、自分に気がありそうな奴に、思わせぶりな笑顔を振りまいたりしてさ~、男全員を自分に振り向かせたい訳?全員自分の虜にしないと気が済まないわけ?」







「そう言うところが、イラつくんだよ!!」








   ヒドイ言われようだ。







ただ笑顔で対応したのが、そんな風に思われているなんて、ショックだ。







「私は、リョウの言っているような事、1度も考えたことすらないわ。ムスっとしているより、笑顔で接したほうがいいに決まっているからそうしているだけ。誤解しないで!」







いつもだったら、あまり反論はしない。






反論しても、喧嘩になってややこしくなるから、しないだけ。







   でも、今は違う。






喧嘩になってもいいってぐらい、ムカついたから。








「お前はそのつもりでも、相手はそうは思わねーんだよ!もっと自分を知れよ。」








自分を知れって言われても、どうしていいのか分からない。








「私にいつもムッとしてろって言いたい訳?」






つい、ムキになってしまった。







ソファーで座っていたリョウは、『はぁ~』と深いため息をつき、怒って立ちすくんでいる真由の正面に来てそっと肩に手を置いた。









「そんな事言ってねーだろう?真由は無防備だから心配してんだよ。レイにしたって、無防備だから抱きつかれたりされたんだろう?」





   リョウはズルイよ。



   こういう時だけ、甘く優しく話してくる。




   



「抱きつかれたのは、レイだけだよ?他の人は手も触れてこないんだから。そんなに無防備じゃないよ・・・」









「それは分かってるよ。でもこれからレイみたいなのが出てくるかもしれねーだろう?だからもっと警戒して、男と2人っきりになるなって言いたい訳。」





   確かに私は、警戒心がなかったかも・・・








「それに、東山とは2人っきりになるなよ?あいつは真由に気があるの丸出しだしな?いくら可愛いとか思っていても奴は、男だぞ?」









「・・・うん。気をつける」




   不機嫌な理由がちょっとだけ分かった。



   それに、ヤキモチ焼いてくれてるって気がして嬉しかった。








リョウは、そっと真由を引き寄せ、髪を撫で始める。








「綺麗な髪も目も鼻も唇も体も、全部俺のモノだからな。他の奴にジロジロ見られるのも、触れられるのも、イラつくんだよ。」








リョウは優しいタッチで、髪を触り、背中をさする。








上から覗き込む薄いグレーの瞳は、まるで催眠術をかけているようで、頭の芯がボーッとする。








「俺の綺麗な真由・・」






顔が近づき、優しくキスされた。