カタカタ…。

ペダルを一生懸命、漕いで学校へ、向かう。

「あっ、」

私がいつも、登るのに苦労している、高い坂の前に、1人の男子が自転車の隣で、かがんでいた…。

なんだろ…

無視したら可哀想だし。
声かけて、みようかな。

「あの…」

私の声に驚いたように、その男子は、振り返った。

「あ、ごめん。 邪魔やったかな?
家の鍵、落としちゃって。」

かっこいいなぁ。

黒髪で、少し焼けた肌。

「そうだったんですか。 大丈夫ですか。?」

彼は、少し困ったように、
「大丈夫じゃないなぁー、家帰れない…」

あ、今帰るところかぁ。

それは、大変だぁ。

「あのっ、良ければ、探してもいいですか?」

その瞬間、彼は、目をキラキラさせた。
「マジで? ありがと〜! マジ嬉しい…」
「あ、いえいえ…暇ですから。」

だけど彼は不思議そうに、私を見た。

「えっ?でも、制服だし、部活じゃん?」

「あっ、学校に宿題忘れちゃって取りに行くだけだから。 大丈夫です。」
彼は、意外にも笑顔になった。

「ドジだなぁー。」

むっ。
ひどい! 初対面なのになぁ。

私がむっとすると、彼は、

「ごめん、ごめんって…」

可愛い…。
手合わせながら、頭下げちゃってるし。
すごい意外性。