恋の花



「結衣!先に行ってるよ!」

「わかった!すぐ行くから~」


中学2年の夏。


明るく元気な声が廊下に響き渡る。



あのときの俺は、落ちこぼれだった。

勉強も、部活も。なにもかも。


友達もいない。
楽しくない毎日。

そんなときに、結衣に会って変わったんだ。

―ドン!

「あっ、ごめんなさい」


ボーッと歩いていた俺は
誰かとぶつかったことに気づかなかった

―パラパラ

その音で俺のボーッとしていた頭は状況を理解した。


廊下に響く紙の束が落ちる音。

「あ…」
ぶつかってきたこの子はそう言って慌てて紙を広いはじめる。

俺も反射的に一緒に拾う。


「ありがとう!」
元気にその子はこんな俺にお礼を言ってくれた。

すると、その子がいきなり笑い出した。