恋の花



「あの……手…」
そう言うと田辺くんはあわてて

私と繋がれたままの手を離した。


田辺くんは頭を掻いている。

どうしたんだろう…
私は首をかしげる

「そう、それだよ、」
いきなり田辺くんが話し出す。

「間宮、おまえのそういうの…
そういう仕草がいちいち目につくんだよな」

怒ってるように聞こえて

「ごめんなさい…」
と謝る

「あ…いや、そうじゃなくて…」
途端に田辺くんはそわそわしだす。


「だからさ、」


その言葉とともに、
私は田辺くんに抱き締められた。


「だからさ、アイツのことは、忘れろよ…」
抱き締める腕に力がこもる。

「アイツのこと、好きなだけだろ?
それにアイツは…浅野と…」


それだけ言うとしばらく沈黙の時間が流れる。

その間も、虫がこれでもかというほど鳴いている。