金縛りで精神的にかなり疲れた僕は、恐怖の中、深い眠りについたらしかった。


また眠りから覚めた僕は、眼を開けるのも怖かったので

暫く、眼を閉じたまま、耳を澄まし、室内の気配を感じた。


鎮まりかえった中、外の雑踏の音だけが耳に聴こえてきた。


な~んだ
気のせいか

安心して
眼を開けると

ヒッ…

声にならない悲鳴を上げた。


クリッとして潤んだ瞳が、僕を覗き込んでいた。


か…か…可愛いっっ

じゃなくって!!


「だっだっ誰だよ!!」
やっとの事で口にすると


えっ!?
と、困惑した顔をしたかと思うと

半透明な彼女は
「もしかして、見えてる?」
と、更に瞳を潤ませながら、何故か嬉しそうに微笑んだ。


僕は恐怖心どころか、そんな彼女を見て、ドキドキときめいてしまった。


幽霊に恋した瞬間だった。

叶うことなんか、一生ないのに。