時は誰も待ってくれない 下

悲しむ必要ないんだよ。
私の中ではもう決まってるんだから。
「今日はいっぱい話してくれてありがとうな、
じゃあまた明日」
いつものように私の頭を軽く撫でると病室を出ていく。
私はその後ろ姿を見つめながら子供の将来を優に見守って欲しいと思った。
優がこの子のお父さん。
優にはたくさん迷惑かけて大変だろうけど優なら優しいし…
ほんとは私がこの手で育てていきたかった。
だから、せめてこの子が生まれてくるまでは
私に出来ることを精一杯しよう。

「じゃ、これは?」
「猫」
「昨日は何を食べた?」
「…分かりません」
「今日の朝は何を食べた?」
「魚」
「じゃ、これは?」
「…分かりません」
私はこれから毎日、鈴木先生と軽く脳のトレーニングを始めるらしい。
動物の絵を見せながら質問をされている。
さっきこの動物の名前わかったのに、思い出せない。
なんだっけ…
なんで思い出せないんだろう。
胸がモヤモヤして気持ち悪くなる。