時は誰も待ってくれない 下

「出産は…どちらかが命を落とす可能性が高い…」
それを聞いた瞬間、足が勝手に動いていた。
嫌な汗をかきながらただ走る。
お腹に赤ちゃんがいるからうまく走れない。
さっきまでフワフワしていた足元が嘘のように
重く感じる。歩く度に床に沈んでいくんじゃないかと思うほど。
私が助かれば赤ちゃんは死ぬ。
赤ちゃんが助かれば私は死ぬ。
そんなの、赤ちゃんが助かればいいに決まってる。
私が死ねばこの子は助かるんだ。
悩んでる暇だってない。出産予定日まであまり時間がない。
私が死ぬなら今のうちにこの子にできることをしてあげたい。