時は誰も待ってくれない 下

高校生活でひとつだけ、鮮明に覚えているのは
入学式の日のこと。
桜が舞い散る中、石階段に座って悲しそうな瞳で空を見つめる隼人のこと。
私と隼人の出会い。
それだけは忘れたくなかった。
私にとってあの時は今の人生に関わってるんだから。
あの出会いは夢でもたまに出てきてた。
それもあって忘れられずにいるのかもしれない。
「うん、昨日よりいい感じだね」
「ありがとうございます」
「明日からもこの調子で頑張ろうね」
「はい!」
鈴木先生にお礼を言って診察を出た。
嬉しくて思わず顔がにやけてしまう。
隼人、私がんばれてるよ。
この調子なら治るんじゃないかな。
絶対隼人のことだけは忘れないよ。
私が死んでも赤ちゃんだけは無事に産んでみせるから。
そのあとすぐに隼人のとこに行くからね。
それまであと少しだから待っててね。