岩陰には


チュ


リップ音をたてながら

唇を重ね合うカップルがいた



うっわ…まじかよ…!



私は急いで岩陰に隠れる





人のキスシーン見ちゃったよ…



大体こんなとこでおおっぴらにするなよ、あんなこと…


私は水音で気づかれないように移動を試みる


そのとき


「じゃあね、また」



「おう」





カップルが別れる声がした




はーぁ…よかった…
だってこれで水音たてたら、人に見られてたってわかるじゃん?




岩にもたれかかって



「ふう」


ため息を一つついた




光「なに?なんか悩み事?」



「うひゃぁぉぁぁぁぁ!!!!!」



光「そんな驚くことないじゃん、峰岸亜果音ちゃん?」




「な、な、なんで私の…」




ビックリした…
急に目の前に男の人が現れたと思ったらその人は私の名前を知っていた



光「まぁ、有名だからね、亜果音ちゃん。」



しかもいきなりの名前呼び


そして…


顔近いぃぃぃぃ///



てか、この顔もしかして…
いや、もしかしなくてもさっきキスしてた男の方だ…




「な、なんで私有名…!?」



光「そんな緊張しないで、ほら、このジャージ。皇成の一年だよ、亜果音ちゃんとタメ」



そう言って男は着ていたジャージをピラピラと見せびらかした


「ほ…んとだ。てか、あなた誰?なんで私の事を…」


光「俺?俺結構テニス界では有名なんだけどなー。」



そう言って男の人はくしゃくしゃと髪をかいた


すごくキレイな髪色
茶色だった
でも裕理の茶色とは違う
もちろん私の茶色とも…

私はサラッと肩より少し伸びた髪を手でとかした


光「俺はね、佐藤光。この合宿のメンバーだよ。亜果音ちゃんはね、密かに皇成のテニス部の中で人気なんだよ」



「サトウヒカル…。佐藤くん?」


光「光でいいよ。俺、前から亜果音ちゃん気になってたんだよねー」



「ど。。。して?」




光くんはまた顔をホント、キスできそうなくらいの距離まで近づけてきた
その間、光くんは一度も目をそらさないで



光「俺と同じだと思ったから」



そうつぶやいた





…は?




いつの間にか光くんは岩陰から砂場まで行っていて



光「はやくしないと、夕食間に合わないよ」




「待ってー!!行くなら一緒に行く!」


光「はやくー!亜果音ちゃん!」





【俺と同じだと思ったから】





その言葉がいつまでも耳に残っていた