ロビーに戻ると、櫻井さんと篠木が二人で待っていた。

いつもながら、うちの営業は見てくれだけはとてもいい。

中身が透けて見えればいいのに、と思うくらいに。




グレーの細身のスーツを綺麗に着こなす櫻井さん。

黒のスーツが、やっと身体に馴染んできた篠木。

ただそこに立っているだけで、二人はなんだか絵になる。




薄い色素の髪に整った顔。

篠木に向けられる顔は、とても大人に見える。

社内で大声を発するとは思えない表情。

仕事をしている櫻井さんは、やっぱりどこか素敵だ。



眼鏡の奥で、嫌味なくらい綺麗な顔がくしゃくしゃになって笑っている。

篠木の顔は、驚くほど整っている。

この二人に囲まれる自分を想像すると、なんだかいたたまれない気持ちになった。




「お待たせしました」




声を掛けると二人がこちらを向いた。

いつも社内で見ている二人が、なんだか知らない人のように見えた。




「お疲れ様。悪かったな、休み中に」


「いいえ。まだまだお休みは長いですから。気にしないで下さい」


「どうせ一人でぼんやりしてたんだろ?なんだよー、俺達が来て嬉しいんじゃないのか?」




正直、あんまり嬉しくないです、と顔だけで苦笑いを作る。

この人のこういう空気が、実は場を和ませるためだと知っている。