覚悟を決めて、櫻井さんを見つめる。

私を見下ろすその顔は、もうすでに拗ね気味だ。


ちょっと可愛いかも、と思ったことは、本人には絶対に言わないでおこう。




「圭都さん、送って・・・くれますか?」




精一杯の台詞を言った。

だんだん恥ずかしくなって、少し目線を逸らしてしまった。

自分でこんなことを言うのは、やっぱり苦手だ、と強く思った。




「ですってよ?櫻井君?」




水鳥さんのその声にも、櫻井さんは反応しない。

恐る恐る櫻井さんの方を向く。


ちょっと赤くなりながらも、私をじっと見ていた。




「あの・・・、圭都さん?」




もう一度問いかける。

そして、ようやく櫻井さんは口を開いた。




「お前、反則。水鳥さんに仕込まれるなよな。反応に困る」




その声は、不満そうな言葉を吐きながらも嬉しさが滲み出ていた。

そんな櫻井さんを見て、水鳥さんと二人で目を合わせて笑った。



どうやら、私と櫻井さんは似たもの同士のようだ。

水鳥さんには、お見通しだったのだと、今気付いた。