食べ終わった包み紙を小さく折りながら、考えていた。

さわさわ、と揺れる緑の木々に囲まれながら。




櫻井さんが、どうしてそんなに私のことを想ってくれているのかを。


実際に話をし始めたのは、この会社に入ってからでしかない。

その前は、『櫻井圭都』という存在さえ、私は知らなかったのだ。



櫻井さんは、湊から私のことを聞いて知っていたかもしれない。

けれど、湊の口から聞いた私の存在だけで、そんなにも想い続けていられるものなのだろうか、と不思議になった。


まして、『湊の大切な人』と認識していた私を、どうして恋愛対象にすることが出来たのだろう。




人の気持ちを探ったところで、それはわからないことなのかもしれない。

自分以外の人の気持ちを、余すところなく正確に理解することなんて不可能だ、と知っている。




疑って。

確かめて。

探って。

伝えて。




繰り返されるその連鎖の中で、結局信じることしか出来ない。

それは、私たちが一人の人間として成り立っている限り、仕方がないことなのだ。



もどかしくて、苦しいばかり。

理解できなくて、戸惑うばかり。

疑うことでしか、相手を確かめられないことばかり。




信じる強さ、なんて綺麗ごとだ。