「時雨、湊のところに行くかい?」
お父さんは私をじっと見ていた。
優しい顔をして。
私の隣ではママが寄り添っていた。
どちらかというと、私が支えられているようだった。
お父さんの言葉に、嘘はないと知っている。
だから、聞かずにいられなかった。
「・・・ウィリス動脈輪閉塞症。似てるね」
はっと、息を呑む声が聞こえた。
お父さんからではなく、ママから。
確信した。
間違いない、と思って。
「湊は、もやもや病・・・だね?」
お父さんは一度目を瞑った。
きっと結果は出ているのだろう、とわかっていた。
正式な結果ではなくても、検査をお父さんが行えばそんな結果を待つ必要はない。
脳外科医として優秀なお父さんを、本当に尊敬している。
優秀だからこそ、残酷な時もあると知っているけれど。
「・・・間違いないと、思う」
ずっしりと、落ちた。
私の胸の中に。
胃の中に。
心臓に。
身体に。
脳に。
耐え切れずに、笑った。
乾いた笑いで。
そう。
『自嘲的』に。
やっと感情を取り戻したのに。
私は、笑うことしか出来なかった。

