始まりのチョコレート






そう訊ねる私の声が微かに笑っているようだった。
顔は見えないけど、その息が漏れるような声は、中谷らしからず、柔らかで暖かかった。



「さぁ、顔見せたら、分かるんちゃう」



相変わらずの意地悪で、私は簡単に切り返されてしまった。
私は、中谷のこういう、無駄に頭の回転が速いところが嫌いだ。
でも、これ以上嫌いになったら、こいつの思うつぼというか。
今私がどう動いたところで結局奴の手のひらで転がされているだけなのだ。
腹が立つ、けど、考えてみたら私はずっとそうだった。
中谷に勝てたことなんて、一度もない。



「・・・私も好き、なんて言うか馬鹿」



やられた。
まるで中谷の胃袋に私の手作りチョコが消えていったみたいに、もう、矢野くんとの出来事がなかったことになってる。