始まりのチョコレート






「・・・・中谷、」


「ん」


「あんまりそんな顔、しないで・・・おかしくなる・・・・」


「それ、おかしくないから」



中谷は、不意に真面目な顔に戻った。
それだけでも鼓動は動きを速めるというのに、今度はまた、私の頬に触れる。
ひんやり冷たくて、大きい中谷の手。
私が冷たいって感じるということは、中谷は私の頬を熱いと感じているんだろうか。

恥ずかしい。
中谷相手に赤面するなんて。
それを、中谷に悟られるなんて。



「・・・・やめて、」



中谷に頬を掴まえられたまま、両手で顔を覆う。

いやだ。
こんなの、私じゃない。



「手、邪魔」


「・・・・・・・」


「顔、見して」


「やだ」


「なんで?」


「・・・あんたこそ、なんで私の顔なんか見たがるの?どうだっていいでしょ」


「俺は、勘違いしたくないから」


「なに言ってるの?今日中谷おかしいよ、どうかしてるよ・・・」



そうだ。
今日はきっと、何かあったんだ。
だからこんな、シャレにもならないことを突然言い出すんだ。

だってこんなの、ありえない。