始まりのチョコレート







「・・・・ばーか、」



拳に変えた右手で、軽く額を押された。
私の空っぽになった体は、そんな軽い力だけで簡単にふらりと後ずさってしまう。
私のリアクションに痺れを切らしたのだろう。



「嫌いなやつのこと好きになんのって、案外、簡単なんやで?」



中谷が、口の端を持ち上げた。
・・・・これは、笑っている、ということになるのか。
皮肉混じりなその顔に、腹が立つ、はずなのに・・・

彼の言葉がなんとなく理解できてしまって、少し、恥ずかしくなった。

ほんの数分前まで、頭は矢野くんのことでいっぱいだったはずなのに。
あんなに中谷のこと、嫌いだった、はずなのに。