始まりのチョコレート







遠くのほうで鳴り響く、車のクラクションの音も、今は耳に入らない。
石のように固まった私は、街灯の下、オレンジ色に染まる中谷の顔を、ただ、見上げていた。



「・・・・・おい」


「・・・・・・・」


「なんか、言え」


「・・・・・・・」



ああ。中谷が何か言っている。
ような気がする。

私の頭の中は、「すき。」という言葉を告げられた直後に一時停止ボタンが押されたように、止まってしまった。


やっぱり私には、非現実的すぎる。


だって、すきの意味が分からない。
私は嫌いだったし、それに、嫌われてると思ってたから。

でも、中谷はずっと、私のこと・・・



「おい」



私のこと、特別扱いしてたの?

確かに、バイト先でも私以外の人とは必要最低限の会話しかしているところを見たことがないけど・・・
それは、ただ私を苛めて面白がってるだけなんだって、思ってたよ。