もぐもぐもぐ、と口を動かしたまま、中谷がそれ以上チョコの感想を言うことはなかった。
・・・・こんなはずじゃ、なかったのにな。
ちょーうまいです!とキレイに笑う矢野くんの顔が、頭に浮かぶ。
私が渡しそびれた甘ったるいチョコレートは、たいした感想も言わない男の胃袋へと、消えていく。
自分からよこせと言っておいて、そんなに不味そうに食べられたら、余計モヤモヤしてしまうじゃないか。
「・・・口に合わないなら、べつに、無理に食べなくても」
「もう・・・ぜんぶ、食った」
「えっ!?」
覗いてみると、確かに箱の中は空っぽになっている。
結構たくさん、作ったんだけど・・・
素直になれなかっただけで、本当はチョコ、好きなんじゃ・・・
馬鹿だなぁ。
素直に言えば、店長にあげずに、ちゃんと渡してあげたっていうのに。
まぁ、義理だけど。
なんて考えながらちらりと中谷のほうに視線を移すと、彼は持っていたペットボトルの水を飲み干していた。
・・・・ああ、やっぱり、本当に嫌いだったんだ。

