始まりのチョコレート







「そんなペースで歩いてたら、朝んなるぞ」


「・・・・うるさいな」



だめだ。
いつも以上に、態度がキツくなってしまう。

ぜんぶ、中谷のせいだ。
中谷がこんなふうに、私に構うから・・・。



とぼとぼ歩く、自分の足元だけをただ見ていたら、大きな靴が視界の端に映った。
着いてこないで、と言おうかどうしようか悩んで、帰る方向が一緒だと言われて終わるだけだろうとすぐに諦める。

気にしないようにしよう。
駅までの我慢だ。

少し、歩くスピードを速めたのも束の間。
中谷は意図も簡単に私を追い越して、目の前に立ちはだかった。



「ん、」



何やら私に右手の手のひらを差し出している。

・・・・なんのつもりだ。
顔を見ても相変わらずの仏頂面で、何を考えてるんだかさっぱり分からない。
この暗がりの中だからか、いつもより威圧感が増して、怖い。



「な、なに?」


「チョコレート」


「は?」


「あいつに渡せへんかったやつ、貸せ」