始まりのチョコレート






大きな影が、私の体に落ちる。

顔を上げると、逆さまになった中谷の顔が私を見下ろしていた。

こんな夜道で 、こんな現れ方をするなんて、心臓に悪い。
けど、中谷らしいとも思う。

中谷の体が、私の後頭部に当たる。
この距離まで近付かれてもその気配に気付かないとは、私が鈍感なんだか、中谷の影が薄いのか。



「涙目」



とだけ、中谷は口にして、コートの袖口で私の目元を拭った。
それがあまりに優しくて、拍子抜けする。



「ほっといてよ・・・」



私を馬鹿にしない中谷なんて知らなかったから、どう扱ったらいいんだか分からなくなる。
だから私はまた、ついつい突き放すようなことを言ってしまった。
そして、私の顔に触れていた手を、ぱしんとはね返した。

顔を前に向けて、また歩き出す。
こんなとこ、中谷に見られるなんて、最悪だ。



ていうか、何で中谷がここに・・・?


ああ、そっか。

そう言えば、駅まで帰り道、一緒だった。