口にするつもりはなかったけれど、思ったことがついつい口をついて出てしまった。
ああ、こんなはずじゃなかったのに・・・。
こんなことなら、気付かなかったふりして、シュミレーション通りにチョコを渡してしまうんだった。
こんな空気になって、今さら渡せるわけがない。
矢野くんは、困ったような、曖昧な顔をしている。
「・・・いや、そういうんじゃないですよ、多分」
返事がたどたどしい。
確実に、いつもの彼とは違う。
今、矢野くんに何を言われようが、なびかない自信がある。
何を言われたって、どんなに優しくされたって、私はきっと、傷付くことになるだろう。
「・・・・ごめん、用事思い出したから、帰るね」
墓穴を掘るって、こういうことを言うんだな。
話があるって、この寒いなか待たせてたのは私なのに、一刻も早くこの場から立ち去りたくて、私はそんな、バレバレの嘘をついた。
最後、視界のすみに映った矢野くんは、何か言いたげな顔をしていた。

