始まりのチョコレート






ようやく、今日のバイトが終わった。
帰り支度を済ませ、裏口のドアのドアノブを握る。
このドアを開けたら、すぐそこに矢野くんがいて、私を待ってるんだなぁ・・・。

まさか、この歳になってこんなに緊張する羽目になるなんて、思わなかった。

あくまで自然に、チョコを渡して、そのまま、その場から立ち去る。
頭の中で何度もシュミレーションした。


「みんなにも渡したんだけど、これ、矢野くんにも・・・」


なんて、言い訳みたいなことを言って。
義理というパッケージの裏に、本命という本心を隠そう。

今は、伝わらなくてもいい。
渡すことができれば、それだけで十分だ。