いつの間にか、「久藤」というらしいさっきの女の子はいなくなっていた。
中谷と話していたからか、あまり二人の仲睦まじい姿を見ずに済んだのは、唯一良かったと思っている。
ただ、二人の関係性は全く見えない。
名字で呼び合う程度の仲なら、恋愛関係というわけではなさそうだけど。
そう言えば私は、矢野くんに彼女がいるのかどうかさえ、知らない。
知っていることと言えば、大学生ということくらいなものだ。
きっと、さっきの女の子は、私より矢野くんの色んな顔を知ってるんだろうな・・・。
比較したって仕方ないのに、ついさっきまで、わりと本気で、手作りチョコをプレゼントしようなんて考えていた自分が馬鹿らしく思えてきた。
・・・・さ、仕事仕事。
こんなぼうっとしてたら、いい加減店長に目をつけられてしまう。
湿ったタオル片手に、新しく入って来た車に駆け寄る。
ガソリンは、既に中谷が入れているところだった。
だから、車体を拭こうかと考えたのだ。

