始まりのチョコレート






余計なことばっか言うのは、どっちだと言いたい。
私に押し付けた手を離して、開いていた本を閉じた中谷の横顔は、決して悪くないのに、勿体無いと思う。
もっと愛想良く、人懐っこい性格にでもなれば、モテそうなものを。
クールに振る舞ったらかっこいいとか思ってんのか、こいつ・・・。

私は、ようやく気が付いた。
神様が意地悪なんじゃない。
こいつの性格に、難がありすぎるのだと。

先刻中谷に潰された鼻を押さえながら、立ち上がったあいつに下からガンをつける。
やつはそれを見て見ぬふりして、仕事中は仕事に集中しろ、とだけ言い残し、私に背を向けた。

その言葉の意味がイマイチよくわからないまま、灰の積もった煙草を、灰皿に投げ捨てる。

眉間に寄ったシワさえなくなればな。
あの目付きの悪さは、子供が泣き出すレベルだ。
あと、もう少し、笑えばいいのに。

だからって、私は絶対、好きになんかならないけど。