奈々は空気が読めないのか、最初は怪訝そうな顔をしていたが、また機嫌が戻ったようで一人でペラペラしゃべっていた。




でも、そんな奈々よりも私が気になるのは今、机に突っ伏している転校生のコト。




…女子たちの質問になんで答えなかったんだろ?




普通なら女子にキャッキャされて嬉しいはずなのにね?




「はーい!もーチャイムが鳴るわよ!!席に座りなさーーい」





そんなことを考えていたが、先生が来たのでもう考えないようにした。





そして、奈々は名残惜しそうに私の席から離れていった。





「あら?何か…みんなしんみりしてるわね?まぁ、授業は元気に受けてね!」




さっきの、奈々の言葉でクラスはシーンと静まり返っている。




雰囲気がはっきり言って悪い。





それから、先生はどうでも良い話をしてクラスを頑張って盛り上げていた。





それを横目に、まだ机に伏せている転校生をちらちらと見る。







「よっし、じゃ授業を始めますよ!教科書の70ページ…あっ!佐々木君はまだ教科書を持ってないのよね?なら、美佳ちゃん!一緒に見てあげて!」




「…え?」




いきなり名前を呼ばれたのでびっくりした。





「いいじゃない~。お隣さんでしょ?」




さっきの態度が少し気になるが、周りの女子からスッゴイ眼で睨まれているため断るなんてできない。





「…分かりました」






「じゃ美佳ちゃんよろしくね♪えーっと?気を取り直して教科書の70ページを見て~…」




先生は淡々と授業を進めていくので、私は教科書を見せるために、転校生君の机に自分の机を近づけた。






転校生君は、ちゃんと起きていたものの、私と目を合わせようとしない。






「……えっと…佐々木君?」





恐る恐る小さな声で言葉を放つ。






「瞬でいいから」




…え?





呼び捨てで良いって事?





なら私…そこまで嫌われてないのかな?





些細なことに少しだけ嬉しくなる。





「んじゃ、瞬くん?一緒に教科書見よ?」





教科書を開き、机と机の間に置く。





それでチラッと瞬くんの様子を見ようと顔を見てみると…。





「…仕方ねー、見てやるよ?」





…え?





み、見てやる?




……何、この上から目線。






瞬くんは何事もなかったかのように冷静な顔をしている。








瞬くんって顔はカッコいいけど、もしかして…俺様系?





一生懸命に考えてみたけれど、答えが見つからない。





初めてのタイプに戸惑うことができない。





でも、そんな中でも授業は進んでいくわけで…。





周りの女子の痛い視線と、瞬くんの威圧感にすこしおびえながらも、授業を受けた。