天野は、今までの夏音の言葉が頭から消えなかった。



『俺はできる限り努力した』


『もう一度天野に振り向いてほしくて』


『戻ってきてくれ』


『ごめん』





『頼むから、信じてくれよ…!!』





大切な人に信じてもらえない夏音は、いったいどんな気持ちだったんだろう。


天野は血の付いた参考書をギュッとにぎりしめた。




今までも、信じてくれと言われていたのに。


信じるチャンスはいくらでもあったのに。





「それを、オレは…!!」




『もうここにくんな』


『二度とオレに近付くな』


『努力されても信じることはない』





『どうせ“好き”って他のヤツにも言ってんだろ?』






どうせ“好き”って他のヤツにも言ってんだろ?




(オレはなにを根拠にして疑った?

なにを考えて夏音を攻めた?


悪いのは、全部オレなのに…?


なんで、どうしてオレは、あの時───…ッ!!)




天野は自己嫌悪の渦にまみれていく。


何時間たっただろうか。


手術中のランプが消え、扉が開いた。


東悟が夏音のそばに寄ったが、天野はよらなかった。


(オレには、心配する資格なんてない…)


それでも夏音が心配で、天野は夏音が起きるまで病室にいることを決意した。


そして、もう一つ。


(夏音が起きたら、最初に謝らなくては)


そんな決心をして─────…