「公…平っ……も…ダメ…っ」


蜜葉は震えながら
俺に必死に抵抗する。

でも俺には止める気がない。

このまま………





《プルルルッ――…》

騒がしい電子音で
俺の動きはピタッと止まった。

チッ…
タイムリミットかよ。

蜜葉は俺の腕を剥がし
鳴り響く電話に出た。


「もしもし?……うん。………そんなわけ無いでしょ?…ふふ…うん、解ったわ。じゃあね」


ピッ…と蜜葉は携帯を切ると
俺を見つめてこう漏らした。


「ごめんね、今日はここまで。翼に呼ばれちゃったから」


ニッコリと満面の笑みを向ける蜜葉。

嗚呼……またこの時間がきてしまったかと痛感する。


「解ったよ…」


俺は渋々返事を返す。

すると蜜葉は、悲しそうな顔をして、俺に近寄った。


「そんな顔しないで……。私も寂しいのよ?」


それはきっと
《嘘》だろう……。

俺はしばらく黙り込んで、
俯いていた。

蜜葉は着々と準備を整える。

今まで俺といた証拠なんて
消し去るように……。

だから俺は蜜葉に
《キスマーク》を付けてやった。

まぁ…蜜葉の事だから、
どうせ上手くごまかすんだろうな………。


「じゃあ、また今度ね♪」


何時もと変わらず
蜜葉はまた部屋を出て行った。

蜜葉のいなくなった寝室は
けだるさと切なさが充満していた。

俺は上半身裸のまま、
ベットのサイドボードに置いてある煙草を取り出し
火を付けた。

乱れたシーツ。
脱ぎ捨てられた俺の服。

眺めるだけ虚しくなる……。

俺は思わず溜息をついた。