公園を出て街灯の近くに行くと、女の顔がはっきり見えた。

「…」

「なんだ?私の顔に何かついているのか?」

「…え、いや別に…」

街灯に照らされて、やっと見えた顔は…いや、顔だけじゃなくて手も、透き通ってしまいそうな程に綺麗だった。
唯一頬だけが微かに薄いピンク色で染まっている。
そして、整った顔立ちに長い睫毛、潤った唇。
暗くて気づかなかったが、この人は“美人“そのものだ。

何故か俺は今までに無い緊張感に襲われる。次第に頬が熱くなってきて、頭、耳、首、手、足、全てに熱が伝わっていった。
胸に手をあてなくても、ドクンドクンという低い音がすぐに分かる。

俺は女に顔を向けられなくなくなって、速足で前に進んだ。



―――――

「…っくしゅん!!」
「…マフラー使うか?」
「いや、大丈夫だ。狩野の家は近いのだろう?」
「…まぁ。つーかなんでお前俺の名前知ってんの?」
「さっき狩野と一緒にいた人が“狩野ぁ!“って叫んでたからな」
「あー。枢木先輩な。ぜってーシバく」