俺はできるかぎり、ギリギリまでついてくるようにお願いした。
「先輩!可愛い後輩のお願いですよ!ついてきて下さい!」
「やーだねー」
……こいつ…!!
先輩は段々と後輩をいじめるのが楽しくなってきてるらしい。
「は、隼斗は!?」
「じゃんけんは公平だ」
意味わかんねーし!!!
俺は歯ぎしりをしたり強く拳を握りしめたりして不満のオーラをだす。
「早く行かないと貞子が待ってるぞ」
隼斗も少しずつ先輩のテンションにながされているようだった。
隼斗の眉間にはシワがよせてあり、鋭い目付きが俺を睨む。
こうもマジな顔で見られては、もう行くしかないのかもしれない。つーか貞子より隼斗の顔が怖い。
俺は貞子のいるベンチの方向へ一歩踏み出して止まった。
未だに下を向いたままの貞子。…いや、偽貞子か。
何かもうあそこだけオーラが違うんですけど。
早く済ませてしまいたいと思ってはいるのだが、どうも足が行きたくないと騒いでいる。
そんな中、おれは先輩に背中をぐいぐいと押された。
「ほらほら行けよ狩野…!」
「ちょっ…押さないで下さい!俺やっぱいやです!止めましょうよ!」
「負けた龍登が悪い」
「隼斗まで!…あー!マジでチョキ出さなきゃ良かった…!」
「狩野!男に二言は無いぞ!」
「…敗北を認めろ」
二人して調子に乗りやがって…!!
「…あぁ!もう!ったく分かったよ!行きゃいいんだろ!行きゃ!こうなったら絶対捕まえてやる!」
あー違う。自分違う。燃えちゃ駄目なんだよ俺。「ホントか!?」と喜ぶ先輩も頭がおかしい。そしてつっこむやつもいない。
俺はこの三人で出掛けては良いこと無いななんて思った。
「よし!じゃあ狩野、成功したら連絡くれよな!」
「…はぁ。……分かりました」
「んじゃ、俺は大谷ん家で寂しくゲームでもしてますか!」
そう言って先輩は帰り道を歩き始めた。
「…龍登」
「…なんだよ裏切り者」
「裏切った覚えはない。…まぁ、いい。とりあえず貞子は捕まえるなよ。後が面倒だ」
こいつは俺にどうしろと。
「…………」
堅物のくせして自己中心的な考えを持っている隼斗に、もう対応の仕方が分からない。
「じゃ、頑張れよ」
隼斗は先輩の元まで走らずに、隼斗らしくゆっくり歩いていった。
「先輩、待って下さい」
「ん?どした?お前もやんのか?んじゃ俺ん家からもう一つコントローラーを…」
「やりません。ていうか毎度毎度俺の許可無しに家上がるの止めてください」
俺、ホントここで何してんだろ…。

