歩き続けて数分。
大分降りた駅から遠ざかって、人通りも時間が遅い分もあり、かなり少なくなってきた。
昔通った保育園側の道を通り、地味に右側通行を守っている。
「おー…寒…」
会話が途切れると、決まって先輩は何か呟く。
保育園を過ぎると、近所の公園が見えた。
「そういやちっさい頃、よくここに来て走り回ったなー…」
懐かしそうに先輩は公園の広場を見て足を止めた。
「そうなんですか?小さな先輩が、走り回ってるのってなんか想像しやすいですね」
「ははっ!んま、想像はしやすいだろな!狩野もよくここで遊んだのか?」
「はい、まぁ。でも、気が乗った時にしか行かなかったから“気まぐれ公園“なんて呼んでたりしました」
「気まぐれ公園か!そりゃいい!そういや大谷はそんぐらいの時からもう“シール集め“始めてたんだろ?」
“シール集め“。隼斗の趣味の一つだ。
初めて知った時はかなり引いたが、一ヶ月ぐらいたつと、隼斗らしくて特に気にならなくなった。
「はい」
当然と言わんばかりに返事をした隼斗はやはり隼斗らしい。
俺はクスリと笑って再び公園を見ると、ふとある事に気付いた。
「あれ?ここ、時計ありましたっけ?」
ちょうど滑り台の前に立っている時計。
確かここには時計が無くて、近くの学校の5時の鐘を頼りに子供は帰っていたような気がする。
「あぁ。あれな。1年前にできたんだよ。お前らが受験で大変だった頃」
「そうだったんですか」