あれは、桜がひらひらと舞う4月上旬のこと。





――――あたしは、一人の男子に出逢った。





あの日、突然あたしの目の前に現れたあいつ。





「俺、貴女に一目惚れしました!」





「……………は?」





軽くはねたような無造作ヘアに、キラキラと耀く瞳、嬉しそうな表情……。




その様子はまさしく、飼い主に媚びる【犬】。





「それだけです!俺、また会いに来ますから!柚希(ゆずき)先輩さよなら!」




颯爽と去っていくあいつは、まるで小さな台風のようだった。




「いや、なんであたしの名前知って……」






――――この出来事が起こった日から、あたしの安穏な生活は一変した。